軍服に身を固め、腰のサーベルを左手で押さえにこやかに小型飛行機から降りてくる青年将校がいる。毎年終戦記念日の今日思い浮かんでくる人だ。彼は私の父ではない。父の直ぐ下の弟だ。もちろん一度も会ったことがない叔父である。 幼い時その写真が仏壇の前に飾られていた。だからいつまでも彼は年を取らない その姿は、あの「硫黄島からきた手紙」で硫黄島に降り立ったスクリーンの栗原中将演ずる渡辺謙さんに重なった。 その叔父は終戦の前の年、中国の華北でマラリヤに罹って亡くなった。彼は軍医であった。つぎからつぎに担ぎこまれる負傷兵の治療でほとんど寝ることも出来なかったと聞く。その疲労からマラリヤに罹ったのだろう。 子供のころ、その叔父の慰霊祭に祖母に連れられて行ったこと、今も鮮明に残っている。 蝉時雨が降り注ぐ夏の太陽が焼き付ける舗道を祖母の手に引かれて歩いていた。 大きな会館の中はもうすでに沢山のひとで埋め尽くされていた。 間もなく式典は始まり会場の照明が消され、真っ暗な静寂が会場を覆った。 私はその時、あの凛々しい叔父が私のそばに来ているような感じがした。 横を振り向くと祖母の横顔が暗闇の中うっすらと微笑んでいるように見えた。 あの時の一瞬の感覚は今も私の脳裏に残されている。 あの戦争で命を懸けて日本を守って亡くなっていかれた多くの人々に心からの感謝の念を持ち続けたい。そして敗戦の日本をここまでして頂いた先輩たちに対しても「ありがとうございます」と申し上げます。
by shikanko
| 2007-08-15 10:39
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